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オーキシンが発根を促進するメカニズムを解明 〜発根を調節する農薬の開発に期待〜 研究活動 | 研究/産学官連携

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Academic year: 2018

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【ポイント】

● オーキシンが、転写メディエーター複合体のかたちを変えることを発見。

● 下流遺伝子のプロモーター上で、転写メディエーター複合体のかたちが変化すること に伴い、下流遺伝子の転写も変化することを確認。

● オーキシンが、下流遺伝子の転写を調節する機構の全容解明に近づく。

オーキシンが発根を促進するメカニズムを解明

〜発根を調節する農薬の開発に期待〜

名古屋大学大学院生命農学研究科(研究科長:川北 一人)の古谷 将彦(ふるたに まさひこ)研究員は、このたび、奈良先端科学技術大学院大学(学長:小笠原 直毅) バイオサイエンス研究科の田坂 昌生(たさか まさお)教授、同研究科の井藤 純(い とう じゅん)助教、神戸大学大学院理学研究科の深城 英弘(ふかき ひでひろ)教 授、中国科学院との共同研究において、植物の発根を促進するホルモンであるオーキ シンに係るその下流で働く遺伝子を活性化する基本的な仕組みを明らかにしました。

これまで、オーキシンと結合した受容体が、転写抑制因子(Aux/IAA)を分解するこ とで、下流遺伝子の転写を ON にすると考えられていました。転写には、転写装置

RNAポリメラーゼⅡ)の起動が必要なのですが、オーキシンによるAux/IAAの分 解が転写装置を起動する仕組みは謎のままでした。

本研究では、転写因子と転写装置をつなぐ転写メディエーター複合体に着目し、オ ーキシンが Aux/IAA を分解し転写メディエーター複合体のかたちを変えることで、 転写装置に動力を伝達することを発見しました。

本研究の成果により、今後、オーキシンと同じように転写メディエーター複合体の かたちを変えることができる化学物質を発根促進剤として開発することで、希少・有 用植物の挿木・挿苗による量産化が期待されます。

この研究成果は、平成28523日付(米国東部時間15時)米国科学雑誌「米 国科学アカデミー紀要」オンライン版に掲載されました。

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【研究背景と内容】

植物の根は、図1のように内部から側方に側 根を形成し、植物ホルモンであるオーキシンが その形成を促進します。オーキシンに対する応 答性が高くなるとたくさんの側根が生え、逆に 低くなると側根が生えません(図1)。そのオ ーキシンの応答性を決定しているのは、たくさ んの下流遺伝子の転写を調節するAUXIN RESPONSE FACTORARFと呼ばれる転写 因子とAUXIN/INDOLE 3-ACETIC ACID

Aux/IAA)という転写抑制因子です。オーキ シンが存在しない場合は、Aux/IAAARFと 結合しARFの転写因子としての役割を阻害し ます。

一方、オーキシンが存在する場合は、オーキ シンと結合した受容体TIR1 (TRANSPORT INHIBITOR RESPONSE 1)Aux/IAAを分 解し、ARFが転写活性化因子としての能力を発 揮すると考えられてきました。オーキシンが側 根を作る際には

Aux/IAA14/SOLITARY-ROOTSLR)が分解 され、ARF7ARF19LBD16に代表される 下流遺伝子の転写をONにします。逆に、オー キシンが存在しないかもしくはSLRに変異が 入って安定化してしまうと、ARF7ARF19 の転写活性化因子としての役割が阻害され、 LBD16の転写がOFFになります(図2)。遺 伝子の転写には転写装置(RNAポリメラーゼ

Ⅱ)の起動が必要なのですが、これらの転写調 節因子が転写装置に動力を伝達する仕組みは 謎でした。

そこで古谷研究員らは、転写因子と転写装置をつなぐ転写メディエーター複合体に着目 しました。転写メディエーター複合体は4つのモジュール(head/middle/tail/kinase)か

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ら構成され、head/middle/tailの3つのモジュ ールは転写装置を起動し、kinaseモジュール

CKM)は転写装置を停止します。

本研究では、IAA14/SLRが転写補助抑制因子 TOPLESSTPL)を介してkinaseモジュール と複合体を作り、下流遺伝子LBD16の転写を OFFにして発根を抑えることを明らかにしま した。また、オーキシンによってIAA14/SLR が分解されると、転写メディエーター複合体か らkinaseモジュールが外れ、LBD16の転写を ONにして発根を促進していることが分かりま した(図3)。

これらのことから、オーキシンによるkinase モジュールの脱着が転写装置に動力を伝達し、 下流遺伝子の転写のONOFFを素早く切り替 える仕組みが明らかとなりました。

【成果の意義】

本研究の成果により、オーキシンが発根を促進する仕組みが明らかとなりました。今後、 オーキシンと同じように転写メディエーター複合体のかたちを変えることができる化学物 質を発根促進剤として開発することで、希少または有用植物の挿木・挿苗による量産化技 術の開発が期待されます。

【用語説明】 オーキシン:

植物ホルモンの一つ。発根のほか、地上部の葉や花の形成を促進する働きを持つ。

転写メディエーター複合体:

酵母から哺乳類、植物まで高度に保存されている。転写因子と転写装置を仲介する巨大 なタンパク質複合体で、動物では癌との関連から研究が盛んに行われている。植物では 最近、オーキシン以外の植物ホルモンや耐病性への関与が明らかになりつつある。

モジュール:

タンパク質複合体の一部を構成するひとまとまりの機能を持ったタンパク質の集合体。

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【論文名】 掲載論文:

Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 米国科学アカデミー紀要

論文タイトル:

Auxin-dependent compositional change in Mediator in ARF7- and ARF19-mediated transcription

著者名:

Jun Ito, Hidehiro Fukaki, Makoto Onoda, Lin Li, Chuanyou Li, Masao Tasaka, and Masahiko Furutani

参照

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